2012年9月28日金曜日

[紹介] 橋本治『ちゃんと話すための敬語の本』

橋本治『ちゃんと話すための敬語の本』
日本語の敬語や敬意表現について、日本の文化的な構造から解き明かす本。敬語のマインドについて橋本節で丁寧に説明してくれてます。これでビジネス敬語が身につく訳じゃないけど、骨太の理解を得るためにはオススメ。(crossreview

 敬語の構造を、成り立ちや歴史的背景を振り返りつつ原理的に解き明かした本。"ちゃんと話すための"というタイトルは伊達じゃありません。

 ちくまプリマー新書の創刊一冊目なので、想定読者である中高生を意識して丁寧な語り口で書かれてはいます。しかし、そこは思考の経過を丹念に、それこそねちっこいというレベルの丁寧さで論理の飛躍無く書き記す著者ですから、内容は類書にない濃さです。しかも、一般的な敬語の解説本はここまで背景的・原理的な話をしていないので、そういう意味でも一読の価値があります。

 本書の中では尊敬・謙譲語の、いわゆる上下関係の他に、丁寧語について「距離感」という概念を持ち込んで説明しています。以前高島俊男さんの本でも「敬語は上下関係よりも自分からの距離感で考えた方がわかりやすい」という指摘を目にしたことがありますが、上下関係という縦の関係と距離感という横の関係が本書では上手く説明されています。

 即物的な「敬語の使い方」ではなく、その背後にある「敬語マインド」を教えてくれる本で、敬語の勉強をしてるんだけど今イチピンとこないという人に特にオススメです。