2019年2月15日金曜日

世良のアコギ

一つのやり方がハマったとき、その手法を滅多矢鱈と濫用して失敗する、という意味の諺・慣用句ってって、ナントカの一つ覚えくらいしか知らないが、もっと良いのはないだろうか。

昔、NHKの「SONGS」に世良公則が出ていた。
今現在(その当時)行っているアコースティックギター一本でのパフォーマンスに変わったいきさつを語っていたのだが、本人のモノローグがふるっていた。
なんでも、コンサートツアーの若いスタッフだかが世良に「世良さんの音楽、聞いていて全然カッコいいと思わない。ダサい」みたいなことを直球で言ったらしい。
世良にとってこの言葉は相当ショックだったそうで、それからしばらく自分のスタイルを見つめ直し、模索したんだとか。
で、たどり着いたのがアンプラグド。そぎ落としたアコギ一本でのシンプルなパフォーマンス。
新しいスタイルでのコンサートが終わった後、件の青年が言ったそうだ。
「世良さん、格好良かったです!」と。

「ああ、そういうことやったんか!」
そのとき合点がいった。
2008年に音屋吉右衛門名義で野村義男と組み、リニューアルされたアニメ・ヤッターマンのOPをする。
そこで昔懐かしいヤッターマンのテーマをアコギ1本の弾き語りテイストで演奏。
作曲者にして元々OP曲を歌っていた山本正之に「デモテープかと思った」と酷評され、新旧のファンから批判を浴びた。
当時、何で元気いっぱいのヤッターマンのOPが、ワクワク感と対極の渋いロックテイストの弾き語りやねん、OPアニメにも全然合ってないやん! と思ったが、要はそういうことだったのだ。

一つの成功体験が、その後の失敗の原因となる…ナントカの一つ覚えではイマイチしっくりこないので、この故事から「世良のアコギ」という故事成語が生まれた…ことにしよう。

なお、デモテープかと思われたアコギバージョンの「ヤッターマンの歌」は予期せぬ炎上商法の結果、スマッシュヒットとなったそうである。