記録を取りながらダイエットをするという方法論は、運動無しで痩せようと思っている人だけでなく、運動しながら減量しようと思っている人にもオススメです。
本書を読んでいただければわかりますが、レコーディングダイエットというのは「メモだけすればいい」「カロリー制限すれば良い」というような単純なモノではありません。地ならしをするように、段階を踏みながら確実に自分の考え方や生活習慣を変えていく、その過程こそが肝だと言えます。
プロセス、というものに注目しても本書は示唆に富んでいます。ダイエットのノウハウはとりあえず脇に置いて、何かを達成するプロセス、あるいは人に何かを勧めるということに着目して本書を読むと、おそろしく構成が良く出来ていることに気付きます。本書からそういう構造を学ぶのもアリだと思います。
ちなみに、この本は木原浩勝さんという優秀なプロデューサーが企画・プロデュースしているのですが、おそらく構成段階で著者とプロデューサーとの間でかなり意見のやりとりがあったんじゃないかなぁ、と思わされます。(内容もさることながら構成や「見せ方」が著者の他の本と比較しても段違いに良く出来てますから)
ただし、ここからは本書に書いてない「その後」の話になります。
本書によって生活習慣それ自体が変わるので、原理的にリバウンドはあり得ない、ということを著者はどこかで言っていました。しかし、残念ながらそんなにうまい話はありません。
というのも、レコーディングダイエットによって生活習慣が変わったのですから、太らない生活習慣も再び「変わる」可能性はあります。1年もの時間をかけてゆっくり変えていったとしても、それが1年かけてゆっくり元の生活習慣へ再び変わっていかない理由にはなりません。
しかも、リバウンド後のリスタートははじめてレコーディングダイエットを始めるよりも難易度はグッと増します。
理由は二つあって、一つは「慢心」です。一度レコーディングダイエットで痩せてるから、次もまた痩せられるだろうという奢りが、小まめにメモを取ることを邪魔します。
もう一つは、「痩せしろ」の問題です。
レコーディングダイエットは運動をせずにカロリー制限で痩せるのですが、その際まず体は落としやすくて必要になればすぐにまたつけられる筋肉から落とします。その筋肉を落とした上でしぶしぶ脂肪を燃やすわけですが、痩せた後に適度に運動をするなどしなければ、そのまま体重(=脂肪)が増えたとき、今度は一回目よりもはじめの痩せしろである筋肉が少ない状態でスタートします。更に、筋肉が少ないと当然基礎代謝量も少ないわけで、どうしたってリスタート・レコダイはハードモードになってしまいます。
そういう意味で、レコーディングダイエットとは、「太りにくい生活習慣」と「痩せにくい体」のトレードオフ、という側面も指摘できるかと思います。
個人的にもお世話になった本ですし、五つ星をつけたいところではあります。が、本書で大丈夫と言われているダイエット後について課題が見えてしまいました。そしてそれ以上に、著者自身のリバウンドが残念でなりません(http://spytune.net/?p=2454参照)。
ということで、運動をしている人で記録を取っていない人と、はじめてダイエットしようと思っている人にはオススメです。ただし、後者は目標体重に到達して体が軽くなったところで今度は軽い運動を始めるのを合わせてオススメします。
ブクログ