女性向けの落語入門。脂の乗りきった落語家9人へのインタビューがメイン。落語への熱い思いは一緒だが、落語に対する考え方は九人九様。落語の懐の深さを感じさせられた。あとがきは…正直読まなきゃ良かったorz(crossreview)
女性向けの落語入門本、といういかにもミーハーな体裁だが、男性が読んでも十分得るところがある。
目玉は、春風亭昇太・立川談春・柳家喬太郎・古今亭志ん輔・柳家花緑・林家たい平・三遊亭白鳥・林家彦いち・桂吉弥という脂の乗りきった落語家9人へのインタビュー。
古典落語専門の落語家から、創作・新作メインの落語家まで、バラエティーに富んだラインナップのインタビューを読んでいると、落語に対する情熱こそみなさん同じだが、それぞれの落語観がビックリするくらい違ったりして驚いた。が、それが逆に、落語という芸の懐を深さを感じさせてくれもした。
春風亭昇太や林家たい平といえば笑点メンバーとしての印象が強いと思うが、そういう人は本書のインタビューを読むと印象が変わると思う。
三遊亭白鳥や林家彦いちは知らなかったのだが、創作落語の作り方や「人に伝えたい」という思いは、落語という枠を超えて、文章を書いたり人に話をしたりする際に参考になることが多かった。やはり、一芸に突き抜けた人の言には得るものが多い。
インタビュー部分、つまり9人の落語家が語るところは掛け値無しに面白いのだが、どうも引っかかるのはインタビュアーの著者。
インタビューというのは、まず読者の代表であるインタビュアーが読者の訊きたいことを訊かなければならない。それに加え、読者が気づかなかった訊きたいことを掘り出して訊けるかどうかで真価が問われる。自分の訊きたいことばかりが突出してしまうのは、それはそれで問題ありだが、本書の場合、インタビューする側にインタビュアー個人が訊きたい「核」のようなものが感じられなかった。出すかどうかはともかく、自分なりの「落語愛」だったり「落語を好きになるポイント」だったり「その落語家に惹かれたポイント」というのがあるはずで、そういう著者のこだわりのようなものが感じられなかった点で、何というか著者が単なるミーハーな落語ファンにしか見えないような仕上がりになっていて残念だった。
あと、注釈部分で「○○師」「○○師匠」とバラバラに敬称をつけているのも気になった。普通、注釈には敬称をつける必要は無いし(少なくとも会話文中以外で故人に対して敬称をつけるのは不要であろう)、つけるのならどちらかに統一すべきであろう(「○○師」って、『月刊秘伝』じゃねえんだから…)。何というか、この辺もちょっと素人のイチビリ感が出ているように感じられて、個人的には不快だった。
あとがきを読んでいて、いきなり『ライトスタッフ』のうんちく話が出てきてビックリした。どうつながるんだ? と思ったが、「いずれにせよ落語は面白いです。」と、やはり単にうんちくを言いたかっただけのよう。が、末文に「師匠」への謝辞が出てきて納得。「師匠」が突然「落語2.0」などと言い出したのはこれだったのか…と何か嫌なモノを読んでしまったorz。
本書の8割部分である落語家へのインタビュー部分(素材)は掛け値無く面白いのでオススメです。