U-20女子ワールドカップで大活躍した田中陽子選手をはじめとするJFAアカデミー福島一期生の選手。彼女ら・彼らが受けていた指導は、自己決定力をつけるための言語力・論理力のトレーニングだった。今が旬の本。(crossreview)
(以下は、2012年9月15日に書いた紹介文です)
つい先頃行われたU-20女子ワールドカップ。日本はアメリカ・ドイツの二強につぐ3位と大健闘でした。
そのヤングなでしこを特集していた某番組で、ヤングなでしこの田中陽子選手らがJFAアカデミー福島にいたことが紹介されていました。同番組ではJFAアカデミー福島での指導として、絵画を見て何が描かれているかなどをみんなで話し合う、というのが紹介されていました。
この番組を見た時は、何となく「何か知ってるような気がするんだけど…」と思ったのですがそのままでした。
その「何となく」に気づいたのは、小田嶋隆さんのこの記事(「ヤングなでしこの受け答えが示す『サッカーと言葉のつながり』」)を読んだときでした。
「あ、そうか! 彼女らの高い判断力としっかりした受け答えはJFAアカデミーの指導の賜か!」
で、急いで書棚にあった本書を引っ張り出して再読した次第です。
本書の内容を、以下、カバー裏の紹介から引用します。
《「そのプレーの意図は?」と訊かれたとき、監督の目を見て答えを探ろうとする日本人。一方、世界の強国では子供でさえ自分の考えを明確に説明し、クリエイティブなプレーをしている。
日本サッカーに足りないのは自己決定力であり、その基礎となる論理力と言語力なのだ。
本書は、公認指導者ライセンスやエリート養成機関・JFAアカデミー福島のカリキュラムで始まった「ディベート」「言語技術」といった画期的トレーニングの理論とメソッドを紹介する。》
思考の材料は言語ですから、言語力を高めることでより精度の高い思考を操ることができるようになります。そして、言語力と論理力を高めることで、普段から自分の行動や一つ一つのプレーに明確な理由・意味を考えるようになります。明確な理由・意味をセットにして行動することとは、、すなわち何かを判断することですから、日々のこのトレーニングが試合の時に的確な判断を下せる素地となっていくわけです。
更に、JFAアカデミー福島では、一枚の絵を見て意見交換したり、ゴール前の敵味方のポジション図を見せて「A選手からはどう見えているか?」「B選手からだとどうか?」などを考えさせることもしているそうです。これにより、視点を切り替えさせ、他者の視点からものを見、考える練習をさせているわけです。思考の型として「他者の視点」(他のチームメイトや敵からはどう見えているのか)を常に意識させることが、敵の裏をかいて味方にどんぴしゃのパスを出したりするクリティカルなプレーにつながって行くわけです。
数年前に本書を読んだ時は「ほぉ~、JFAはまた面白い取り組みをやってるなぁ~」と感心したんですが、JFAアカデミー福島の第1期生・田中陽子選手の活躍とインタビューを見るにつけ、著者らの指導方針は間違ってなかったと思いました。
今回のU-20女子ワールドカップの結果を受けた今読み直すのが旬の本です。