2012年7月30日月曜日
[紹介] 三木義一『給与明細は謎だらけ』
サラリーマンの給料を中心に、所得税制について丁寧に説明されている。サラリーマンは税金を取られている自覚をもっと持つべきだ!という熱い思いが読者を「羊」と呼ぶことに現れているが、先生、それ…(crossreview)
一般的なサラリーマン(給与所得者)を念頭に、給与所得を中心に説明した所得税の概説書。自分の税金についてほとんど考えたことのないサラリーマンにジャスト・ポケットな作りになってて読みやすいです。
給与所得の計算の流れに沿って書いてあるので、源泉徴収制度や各種控除の制度趣旨(何でそんな制度になっているのか)を理解しながら制度の概略が理解できるようになっています。
著者は、日本の給与所得者が、源泉徴収制度と多めの給与所得控除により税金のことを全くと言って良いほど考えない・理解していない現状に対し、積極的に問題提起をしています。ですから、単純に「制度としてそうなってる」という以上に制度の理解が深まるのですが、読み進めていると「いっそ源泉徴収制度を廃止し、給与所得者全員に確定申告させるようにした方がいいんじゃないか。敢えて面倒くさいことをさせることで税について意識させ、そこから税金の使い方(=政治)に意識を向けさせることで、政治への無関心を脱却させることが可能なのでは?」と思えてきます。
著者は岩波新書から『日本の税金 新版』も出版しており、一部重複する所はあるが、話題を絞ってある分だけ記述が厚くなっているので、『日本の税金 新版』だけではわかりにくかった部分はこちらを参照するとわかりやすいです。
一例を挙げると、消費税制が非正規雇用・派遣労働を制度として後押ししてしまっていることについては『日本の税金 新版』でも触れられていますが、本書ではその辺がより詳しく説明されています(196頁以下)。
著者が、特にサラリーマンに税金のことを意識して欲しいという思いはよく理解できますし共感を覚える所ですが、知らないうちに税金をむしり取られているサラリーマンを羊と例えるのだけは、いかがなものかと思います…