2012年7月9日月曜日

[紹介] 三木義一『日本の税金』(新版)

三木義一『日本の税金[新版]』

小書ながら、現行税制の概略に加えて課税根拠と問題点について考察している。配偶者控除の正しい趣旨を本書で知った。消費税は一見シンプルだが、よくよく考えると複雑。税を避けて「国家」と「公平」は論じられない(crossreview


現行税制について説明し、その問題点を考察し、筆者の見解が示されているタイプの本。その点、現行税制の概略をつかみたいという人のニーズとはずれるかもしれません。

確かに、税について勉強するには現行税制を概観して、説明するタイプの本も必要です。特に実務を視野に入れると、立法論よりまず現状理解が優先します。

しかし、本書のように現行税制の問題点を指摘し、よりよい税制を提言する本は、「なぜそのような税が課されているのか(趣旨)」や「その課税は公平なのか」という根本から見直しているので、制度を根っこから骨太に理解するのに役立ちます。私自身、配偶者控除についての理解が誤っていたことを本書に教えられました(配偶者控除は専業主婦を厚遇するものである、と思っている人は本書で制度趣旨を確認して下さい)。


昨今(2012年4月3日現在)、消費増税が議論の的となっていますが、議論の前提として消費税の制度について理解しておく必要があります。
ちなみに、本書の指摘で勉強になったのが、「消費税は派遣労働を税制面から促進してしまう」という指摘です(115頁)。このような経済活動に与える影響を知ると、税というのはまさに政治に直結していると再認識させられました。

税について予備知識が全くない人にはやや敷居が高いかもしれませんが、税について考える上でじっくり腰を据えて読む価値のある本だと思います。