タイトルよりも穏やかな内容で、著者の体験+古今のノート例で手書きとノートの効用をすすめる本。
ちょっと書き方がエッセイ風というか、ゆるい書き方なので、「バリバリに続くノート術のノウハウが知りたいぜ!」的な人だと散漫な印象を受け、不向きと言えるかもしれません。
しかし、著者が考えるノート術やそのコツって、著者自身の経験や著者が調べた古今の有名人のノート術から集積されているものだから、あまり截然と分けられるのも、それはそれで読みにくかったり説得力が無くなったりするだろうことも確かだと思います。
テクニック的なことは類書と比較するとあまり書かれていない印象です。
しかし、ノート術で大事なのは、とにかく自分の手を動かして書く、そしてそれを習慣にすることです。
既存のレディメイドなノート術を苦行のように続けるのではなく、あれこれやってみて試行錯誤の中から自分に合ったノート術を作り出していく。その過程こそが重要だと僕も思います。
そういう意味では、細かいテクニックをあれこれ書いておらず、それよりも手書きの効用など「手で書くことの重要性」に記述を割いている本書は、本当の意味でノート術について誠実に説明していると思いました。
と言いつつも、本書から得たテクニックがあったりします。
それまでは全ての情報を一元化しようと、全部ノートに集約しようとしてました。が、これをやめ、書き付け用のメモと、まとめて練るノートとの用途の分離と使い分けをしてみました。
書き付け用メモは、後で破けるメモ帳的なもので、とにかく何でも書き付けるようにしています。持ち運びできて、後でちぎって捨ててもOKなのでとりあえず書き付ける、という位置づけです。
その書き付けメモを後で見返し、必要なものノートに貼り付けるか書き写す、もしくは膨らまして書く、というのがノートの使い方です。気分が乗ればナンボでも書けますが、気分が乗らないときは最低限(必要であれば)「メモを貼るだけにする」と決めているので、変な気負いなく続けることができます。
我々は、普段頭の中であれこれ考えているつもりですが、実は思考は堂々巡りをしていることがほとんどです。その証拠に、一度考えていることを書き出してみて下さい。びっくりするくらい筆が止まりますから。
逆に、頭の中で漠然と考えていたことを書き出し、ノートの上に対象化することで、更に検討が進みます。
更に、頭の中で漠然と考えていたことを吐き出した後、それを文章化しようとすると、それがいかに難しいかを痛感します。そして、その文章化の作業はそのまま思考を厳密にする訓練に直結します。これはパソコンでやるよりも、紙に手で書いた方が格段に効きます。何故かはよくわかりませんが、感覚的には「パソコン=おしゃべり、手書き=書き言葉・文章」という傾向があるように思います。
ちょっと落ち着いてものを考えてみたい、という人に一読をオススメします。
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