アレクサンドロスとエメネウスが遂に出会う。エメネウスは書記官として、記録整理の方法を提案したり、鐙を考案したりと工夫好きな私の心をくすぐってくれる。アレクサンドロスの二重人格が、本巻で仄めかされている。(crossreview)
アレクサンドロスとエメネウスが遂に出会う。が、書記官として働くエメネウスと、ミエザ(学校)に通うアレクサンドロスとの絡みは、現時点ではここだけ。
フィリッポス王が才を見込んだエメネウスは、書記官として働き出すと、記録文書の整理法などを提案していく。ちょっとしたシーンだけど、もう工夫好きのツボはビシバシ突かれているわけです。
続いて、乗馬訓練をすることになったエメネウスは、馬の乗りにくさと母が残したペンダントから鐙(あぶみ)を思いつく。鐙があった方が乗り降りも楽だし、踏ん張りが利くから乗りやすいと主張するも、「そういう便利なものに頼っていると鐙無しで馬に乗れなくなるぞ」と注意される。これもどちらかというと小さなエピソードではあるが、常識や思い込みの不合理さが鮮やかに描き出されている。ここは読んでいてドキッとさせられた。
後半は、アレクサンドロスたちミエザに通う者達のエピソード。滝壺から落ちて仮死状態になっているハルパロスに人工呼吸と心臓マッサージをして蘇生させるアリストテレス。この時期にこれらの救命技術があったのかは知らないが、アリストテレスなら知ってそう、と思ってしまうのは、やはり作品のあちこちにちりばめられている「工夫」があるからかもしれない。
アレクサンドリアのお母さんはだいぶん奔放で、ちょっとおかしげな感じが漂っているが、そこでアレクサンドロスの二重人格が示唆される。
ちなみに、オカンが裸で大蛇を抱いているのは、おそらく辺見マリの影響だと思われる(ウソ)。