カルディア時代の過去との決別が済んだエメネウスは、遂にマケドニア王・フィリッポスに仕えることに。庭の噴水の細工や、王子に献上する玩具の話が妙に面白い。『ヘウレーカ』と同じく、ギミックの見せ方が上手い!(crossreview)
故郷カルディアでの思い出に決着をつけたエメネウス。彼は遂にマケドニア王・フィリッポスに仕えることとなる。ちなみに、フィリッポスはアレキサンダー(アレクサンドロス)大王の父。やっと話が入り口まで来たという感じもするが、ここまでの物語も面白いから、言うほど「やっと」感はないか。
マケドニアに書記官として仕官することになるエメネウス。
本巻ではマケドニアに来てからはあまりストーリーの進展はなかった。が、その分面白かったのが、細工に関する二つの話。
一つは、エメネウスが居候する屋敷の庭にある噴水の仕掛け。水流の力でポセイドン像が動いたり、魚やタコが出てきたりする仕掛けなのだが、その仕掛けを見て応急処置を施すエメネウスの姿が、何か良いんです。
もう一つは、王子のために玩具を作るシーン。これもちょっと手が込んだからくり玩具で、こういうのも見ていてワクワクさせられる。
これは『ヘウレーカ』でもあったのだが、当時のテクノロジーでからくりを作るシーンに私は弱いのかも知れない。しかも、作者の描き方が上手くて、仕掛けをいきなり見せるのではなく、どういう風になってるか少し謎解きのエッセンスを入れて描いているのがニクいところ。読んでいて、登場人物と一緒になって「これ、どうなってんだろ?」と考えながら読む内に、マケドニアン・ピタゴラスイッチの世界に引きずり込まれてしまう。
もう政治とかいいから、当時のテクノロジーでの工夫・からくりをもっと見せて欲しい!(笑)