2012年4月19日木曜日

[紹介] 堺屋太一『組織の盛衰』

堺屋太一『組織の盛衰』

組織とは何か?(組織学)について、実例をふんだんに交えながら説明した一冊。機能体と共同体の指摘に納得!総論→実例という切り分けがハッキリした書き方は、読みやすくわかりやすい文章の参考としてもオススメ!(crossreview

組織というものに焦点を当て、古今の具体例を引きながら分析・解説した一冊。

組織というのは大きく分けて二つに分類されます。
一つは、目標達成に向かって活動する機能体。
もう一つは、組織内での構成員の交流を目的とする共同体。
そして、組織というものは機能体であるはずがいつの間にか共同体化し、衰退していく。これがよくある組織の一生です。

この組織の一生を霞ヶ関の官庁に重ね合わせると、国益よりも省庁自体の利益を優先してしまう役所の体質にピタリと当てはまります。
と同時に、僕自身、昨年度まである組織に属していました。が、この組織も見事なまでに当初の目的・目標を見失って共同体化し、内部でのコミュニケーションや「ためにする内部規律」が横行していました。(これを読んだときは苦笑せざるを得ず、程なくこの組織を辞することになりました)

こういう、組織であれば大小を問わず妥当する原理や法則を見つけ出して指摘するところはさすがだよなぁ…と筆者の著作を読む度いつもうならされます。


本書ではもっと細かく組織について分析し、その性質について論じていますが、ここで特筆すべきは、筆者の文章構成のうまさでしょう。パラグラフごとに総論と具体例の書き分けがきれいになされているのですが、レジュメチックなぶつ切り・切り貼りの印象は受けません。明晰に整理されてわかりやすいのと読みやすいが両立している文章のお手本と言っても過言ではありません。
小論文が書けないと悩んでいる受験生や説得的な文章を書きたいと思っている人は、一度参考にしてみてもいいんじゃないでしょうか。