今回も古書ネタを上手く使っている。足塚不二雄『UTOPIA』もだが、福田定一『名言随筆 サラリーマン』と聞いて思わずニヤリとしてした。ネタを知っていても、ミステリとして十分楽しませてもらった。オススメ。(crossreview)
鎌倉の古書店・ビブリア古書堂を舞台にした、古書にまつわるミステリ。
主人公の大輔と、若い女店主・栞子のやりとりが個人的にもどかしかったりします。友達以上恋人未満の関係って奴がどうにもやきもきさせられて心臓の裏がかゆくなるような印象を持ってしまい、高橋留美子作品はだいたいそのかゆみとの戦いになりますし、椎名軽穂『君に届け』なんて「お前ら、おっちゃんがホテル代出したるからちゃっちゃとすることしてきなさい」と自分でも愕然とするほどゲッスいコメントが読んでて頭に浮かびました。
それなのに、ああそれなのに…今回は大輔の元カノが登場。心の蕁麻疹が止まりそうにありませんorz
それはさておき、今回も古書にまつわる蘊蓄を見事に料理してミステリに仕上げる、その手腕に脱帽です。
アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』についてはスタンリー・キューブリックの映画しか知らなかったのですが、最後のオチははじめの方で何となくピンと来ました。(だからといってこの話が面白くなかったわけじゃありません)
福田定一『名言随筆 サラリーマン』は、博物展で現物を見たことがあり、そのとき横にいた初老のオッサン(敢えて紳士とはいいません)がその奥様に滔々と蘊蓄を垂れていました。本作は古書の著者名・タイトル・出版社名がそのまま章のタイトルになっているので、目次でこの章のタイトルをみただけでニヤッとしてしまいました。が、モノと蘊蓄はわかっていてもミステリの持っていきようはわからず、きっちり楽しませてもらいました。
そして足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』。少し前に藤子不二雄A『まんが道』を読んだところだったので、これまた目次を見ただけでテンションアップ! 本書でテーマとなっている栞子の母の謎と、マンガ古書の評価変遷がうまく絡まった話でした。
とにかくわんこそばのように次々つるつると読んでしまいます。気がついたら第3作をポチってました。