2013年3月6日水曜日

[紹介] みなもと太郎『風雲児たち』(1巻)

幕末の因縁は関ヶ原にあり、と描き始めて延々江戸時代を描くことになった名作歴史大河マンガ。関ヶ原の戦いとその戦後どういう因縁が生まれたのかがよくわかる!ドタバタギャグ全開だが、薩摩の正面退却は血気迫る!(crossreview

 知る人ぞ知る、名作歴史漫画! 何故これを何で全国の公共図書館・学校に全巻揃えないのか理解に苦しむ、それくらいの名作です。

 本作は、2012年7月26日現在も連載が続く歴史大河漫画。
 元々幕末モノを描こうとした作者は、「幕末の因縁を辿ると関ヶ原に行き着くのだ!」と関ヶ原から描き始めます。が、これが「大いなる誤算」の始まりで、そのまんま江戸時代を丸ごと描くことに(笑)。
 「いつになったら幕末を描くんだ!」と編集者にせっつかれながら、泣く泣くエピソードを飛ばし飛ばしして(その分を「外伝」として同人誌で出していらっしゃいます)、ワイド版20巻分でやっと”幕末編”へ!(「え!? 幕末!!」とか言わない!)
 そして、幕末編が現在20巻まで出ていて、ようやく次巻で桜田門外の変が起きるところまで来ています(笑)。

 本作は絵柄がギャグタッチですが、漫画読みの中には、絵柄だけで読むのを拒絶する人が一定数いるそうです(例えば福本伸行作品などでも、絵による拒絶反応を示す人がいるようです)。
 ですが、本作をそのような理由で舐めてかかったりパスしたりするのは、日本人に生まれてきたことの数パーセントを損していると言わざるを得ません。本作のような掛け値無しの名作を、嫌いな野菜を食べないみたいなつまらない理由で避けちゃうことは、本当に勿体ないです。ワンガリ・マータイ女史も日本語が読めたら、本作を読まない日本人にきっとこう言ってるはずです。「MOTTAINAI」と。

 さて、記念すべき第1巻は関ヶ原の顛末です。今読み返すとドタバタギャグ全開ですが、関ヶ原の戦いがわかりやすくまとまっています。ただ、小早川秀秋の描かれ方はさすがに気の毒なものがありますが…(笑)。ちなみに、主家・毛利家のために4時間もランチをして山上の毛利軍・長宗我部軍の道をふさぎ、下山を阻止した吉川広家が、個人的には一番お気に入りのキャラだったりします(ただし、彼のもくろみは見事に外れます)。

 ご存じのように、関ヶ原の戦いは徳川方の大勝利に終わるのですが、この時、何のために参戦したかわからない藩が3つあります。それが、薩摩・長州・土佐です。
 薩摩は正面の敵陣に向かって「退却」し、1600の兵が60人以下になるという壮絶な犠牲を払いつつ退却したため、地理的な要因もあって戦後も所領を一切減ぜられずに済みました。
 しかし、うかうかと西軍の大将となってしまった毛利は、危うく取りつぶしになるところを防長二州に減封されることで乗り切ります。
 この時から、薩長の幕府に対する恨みは連綿と300年にわたって受け継がれ、幕末に帰結するわけです。
 土佐については2巻で語られますが、この後も3藩には苦難に見舞われ、散々苦渋を舐め尽くすことになります。が、それは次巻以降で。