2013年10月2日水曜日

[紹介] 夢枕獏・岡野玲子『陰陽師』(1巻)

怨霊や魑魅魍魎が跋扈する平安京を舞台に、安倍晴明と源博雅が活躍する漫画…というより幻想絵巻。冒頭の百鬼夜行からシビれる。琵琶・玄象の話は「呪」の概念がよく理解できる。「梔子の女」はミステリとして秀逸!(crossreview

 怨霊や魑魅魍魎が跳梁跋扈する平安京。その平安京を舞台に活躍する稀代の陰陽師・安倍晴明。そして、晴明の友人にして管弦の道を極めた殿上人・源博雅。そんな二人を主人公にした漫画…というより幻想絵巻と言った方がいい作品です。

 冒頭、修行中の晴明が、師匠・賀茂忠行と百鬼夜行に遭遇する所からシビれます。一見すると禍禍しくも幻想的なんですが、よく見るとコミカルで、スカした晴明よりもよっぽど生き生きしてやがります(笑)。

 天皇が大切にしていた琵琶・玄象がなくなり、それが羅城門で夜な夜ななっているという怪事件が起きます。それを取り戻そうとする博雅は、相手が妖怪の類だとわかると晴明に相談することにします。
 そこから晴明と博雅による「呪」(しゅ)についての話がはじまるのですが、これが現代の言語論や認識論に通じる「名付け」の議論そのもので、読んでいる内にその議論に引き込まれていきます。しかもこの議論があやかしと対峙するときにしっかりフリとして効いてくる辺り、話の持って行き方も上手いです。玄象を持ち去った漢多太と晴明の駆け引きなんて、平安の「ジョジョ」と言っても過言ではありません。

 「梔子の人」は、お寺で起きる怪異の謎を解く、短編の平安怪奇ミステリです。この頃はわかりやすくて本当に面白かったなぁ…(笑)

 平安時代の文化や当時の感覚を知るという受験生的な面でも得るものが多いですが(古典が苦手な中高生は一読の価値あり)、漫画としての面白さはそれ以上です!