2013年10月23日水曜日

[紹介] 夢枕獏・岡野玲子『陰陽師』(4巻)

本巻で圧巻なのは「白比丘尼」。原作では、人魚の肉を食い、永遠の命を得た女の体に溜まる禍蛇を三十年に一度祓うだけだった。が、本作では、永遠に生き続けなければならないことに耐えられない悲劇に昇華されている。(crossreview

 安倍晴明&源博雅コンビによる平安怪異謎解き絵巻の第四巻。

■蟇(ひき)

 冒頭、美しい月夜に誘われるように、笛を吹きながら夜道を歩く源博雅。博雅は笛に没頭していて気づかないが、彼の笛の音によって屍肉を食らう鬼は姿を消し、盗賊も涙を流す。
 …これ、『古今著聞集』のエピソードをアレンジしてるんですよね。それ以外にも、源博雅については一巻の玄象を取り戻す話も『今昔物語集』に見える話を元にしているわけですが、元ネタも読んでみたくなる面白さです。
 あと、こう言っちゃ何だけど、自分の能力に全く気づいていないところは「涼宮ハルヒ」的と言えるかも知れません(笑)。

 このエピソードは、応天門の変が舞台になっているのですが、小学館の学習漫画『日本の歴史』で読んだ『伴大納言絵詞』を元にした話とは全く違う陰謀劇が新鮮でした。

■白比丘尼

 本巻で圧巻なのはこの話でしょう。
 原作の夢枕獏の小説では、かつて人魚の肉を食べたため、永遠の命を得てしまった白比丘尼の体に溜まる「禍蛇」を、三十年に一度祓うだけでした。しかし、本作では、永遠に生き続ける辛さに耐えきれなくなった白比丘尼が「死ぬための手段」に出て、儚くも美しい悲劇に昇華されています。
 晴明の、覚悟を絞り出すような台詞が読んでいて胸に刺さりました。
禍蛇を 祓わねば
女は鬼になる

博雅…

おれは
人は殺さぬが…


鬼は退治するのだよ