「平安幻想怪奇謎解き絵巻」の第二弾。盗賊が晴明の屋敷に迷い込む所から物語が始まる。大路を進む牛車に、同じ頃、身に覚えの無い恋文を受け取る博雅。祐姫に菅原道真も登場。最後に晴明たちが辿り着いた真実とは?(crossreview)
安倍晴明&源博雅コンビによる、「平安幻想怪奇謎解き絵巻」の第二巻。
京極夏彦の京極堂シリーズが「この世に不思議なことなど何ひとつ無いのだよ、関君」と怪奇現象をロジカルに説明していくのに対し、こちらはあやかしや怪奇アリが前提の世界で、クールな安倍晴明が「どういうあやかしの類が、どういう原理・理屈でこういう事件を起こしているのか」と説明してくれる。本当にこの頃はお話になってたし、晴明の言うこともわかりやすかったんだよなぁ…(遠い目)。
■鬼のみちゆき
盗賊・赤毛の犬麻呂が晴明の屋敷に迷い込み、騒がしい家財道具や式神の"歓待"を受ける所から物語がはじまる。
その赤毛の犬麻呂が、大通りで鬼の引く牛車と行き会い、命を落とす。その牛車は毎夜八条、七条、と内裏に向けて近づいてくる。
途中、祐姫や菅原道真なんかも出てきててんやわんやになるが、この牛車の正体やいかに? って、作品の構造が完全にミステリになっているのである。ヒントは随所にちりばめられており、あやかしだの聞いたこともない外法を用いているので推理はできないにしろ、伏線の回収は見事!
話の中で、晴明が博雅に平安京の秘密を語る場面がある。そこで、大内裏に九字の法が施されていることを指摘する晴明。しかし、九字の法は修験者などが異界へ扉を開けるためにする法であり、内裏を守るどころか、内裏を異世界との出入り口にしてしまう。が、内裏からこの世界に入ってきた物の怪たちは風水の四神相応のガードと羅城門により平安京の外に出ることができない。結果、平安京には百鬼夜行が…という皮肉な話が語られるのだが、この辺は京極夏彦『姑獲鳥の夏』の冒頭100頁で延々と実存について議論していた部分とかぶって見えた。いや、こういう本筋に関係ありそうで無いような話、しかも平安京を夜な夜な跳梁跋扈する百鬼夜行をレイヤー構造で説明しちゃう晴明…嫌いじゃないです(笑)
■天邪鬼
こちらは前巻の『梔子の女』に近い怪奇ショートミステリ。夜な夜な切り株の前で人を踏みつけにする鬼の子。その正体とは?