2012年11月2日金曜日

[紹介] TENGA研究会編『TENGA論』

TENGA研究会『TENGA論』
男性用アダルトグッズの本というだけで馬鹿にしたり忌避したりせず、とにかく騙されたと思って読んで欲しい。そこには日本が誇るべきモノ作りの精神がぎっしり詰まっていて、プロジェクトXのような感動があるから!(crossreview

 男性用アダルトグッズに革命を起こした「TENGA」。その開発と普及に懸けた熱い思いが伝わってくる、「プロジェクトX」のような本。

 男性用アダルトグッズ、ということで特に女性は引いてしまうかもしれません。
 が、どうかそういう「入り口」の印象だけで忌避せず読んで欲しい。題材は確かに男性用アダルトグッズですが、そこに描かれているのは、もの作りに懸ける男達の熱い情熱なんです!

 TENGAは、グッドデザイン賞で一次審査を通過するものの、前日になって前触れもなく撤去命令が下るというトラブルに見舞われたことがある。そのときのTENGA開発者・松本光一の叫びには胸を打たれました。
「オレたちは、この製品にプライドを持って作っている。誰もが平等に性を楽しめるよう、真面目にモノ作りをしている。手を抜いたことなど一度もない。グッドデザイン賞というのは、モノ作りや普段日の当たらない中小企業に対して、やる気と活力を与えるのが目的の賞じゃないのか? オレたちはこれに信念を持って人生を賭けているんだ。世の中の役に立てると思ってやっている。モノ作り屋として恥じることなど何一つしていない。オレの言っていることが間違っているというのなら、撤去してみろ!」

 TENGAは、それまでの男性用アダルトグッズと一線を画し、使い心地・使いやすさ、そしてスタイリッシュなデザインに徹底的にこだわって作られました。その結果、TENGAは医療の場でも用いられているそうです。
 また、TENGAは身体障害者のセクシュアリティ支援にも力を入れています。私は本書を読んだ後、河合香織『セックスボランティア』を読んだのですが、同書で書かれていることの何割かは、TENGAの登場で劇的に変わってくる(あるいは変わった)と思いました。

 本書には、ケンドーコバヤシをはじめ、みうらじゅん、マキシマムザ亮君、カンニング竹山、古田新太、リリーフランキー、そしてビートたけしという錚錚たる面々が寄稿しています。これだけの人たちが文章を寄せているのは、TENGAを作っている人たちの本気の思いが彼らの心を打ったからに他なりません。

 本書には、ユーザーのために、本当に良い物を真剣に作ろうとする、もの作りの原点にして神髄が詰まっています。題材の印象だけで忌避せず、是非読んで欲しい一冊です。