2012年11月21日水曜日

[紹介] 岩田温『逆説の政治哲学』

岩田温『逆説の政治哲学』
政治哲学に関する名著のフレーズを紹介しつつ、著者の解説・コメントが付された本。一節が短くコラムのようで読みやすい。また、発展的な読書のためにと紹介される参考文献が充実。保守思想の入門書としてもオススメ。(crossreview

 テーマごとに政治学・政治哲学に関する古今の名著のフレーズを紹介しつつ、著者が解説とコメントを付した本。一節が短く、コラムのようで読みやすい。これは著者が体系的な説明をすることを敢えて避けたから。体系的な説明をしてしまうと、却って見方が固定されてしまうことをおそれてのことだという。結果的に、トピックごとに気楽に読める体裁になっている。
 が、扱っているテーマは「政治とは何か」「保守と革新」「民主主義の問題点」「全体主義の本当の怖さ」「正義が狂気に変わるとき」「本当の正しさとは何か」と一筋縄ではいかないものばかりである。
 いずれも読み応え・考え応えがあるが、特に考えさせられたのが「第五章 正義はやがて、狂気に変わる」である。かつて山本夏彦は「あたしゃ正義が嫌いだ。正義は、他人に正義を押しつけておいてなお正しいという顔をしているからだ」という事を言っていたが、人間が自分の正義を確信したとき、正義は内省というブレーキを壊してしまう。残虐な行為というのが往々にして正義の名の下に行われるというのは分かっていたつもりだった。しかし、フランス革命の実態について紹介されていた箇所はさすがにビックリした。国王の横暴と貧困に耐えかねて民衆が蜂起した、くらいにしか理解していなかったが、そもそもバスティーユ牢獄には政治犯はいなかっただとか、暴徒と化した民衆がどれだけ残虐なことをしたかを知り、愕然というより唖然としてしまった。これからはうかつに「フランス革命について知りたければ『ベルばら』読んだら?」と言えなくなったなぁ…(笑)。

 また、各節末には「発展的な読書のために」として紹介される参考文献が充実している。本文中でも言及されている思想家や著作については、思わず読んでみたくなるものばかりである。著者の紹介の仕方の上手さに脱帽である。

 政治哲学の入門書、あるいは政治や民主主義・全体主義などについて知り、考えてみるのにオススメの一冊。