1980年代に一世を風靡したゲームブックが、まさかこんな進化を遂げているとは!村人の中から人狼を見破るのがメインだが、途中で出題されるパズルも秀逸。本でなければ楽しめない仕掛けがいっぱいで良く出来てる。
私にとってゲームブックは、ファミコンソフトを買ってもらえなかった小学生の頃に、ドラクエの代替品でした(私の親は本に関しては比較的寛容で、マンガでもゲームブックでも買ってくれました)。
ゲームブックについてご存じない方もいらっしゃるかも知れないので、少し説明しておきましょう。
ゲームブックとは、読者の選択によって展開や結末が変わる、まさにゲームとして遊ぶことを目的として作られた本です。
ゲームブックを開いてもらえばおわかりになりますが、本文が数百のパラグラフに分けられており、ランダムに並べられています。そうやって先のお話をわからないようにしてあるわけです。パラグラフにはそれぞれナンバーが振ってあり、もちろん1から読み進めるのですが、そのパラグラフの終わりに「284に進め」という指示があったり、「東へ行く→15に進め/西へ行く→302へ進め」と選択肢があったりします。そうやってあっちこっちパラグラフを飛びながら読み進め、物語をクリアするわけです。
また、ロールプレイングゲームのような冒険モノだと巻末にステータス表(アドベンチャーシート)があり、そこでHP(体力)や装備品、アイテムといったものを書き込むようになっているものもあります。
ゲームブックは1980年代に海外で生まれたのだそうです。が、90年代に入ると急速に廃れていきました。ゲーム自体が普及したことでわざわざゲームブックなんて七面倒くさいことをする人がいなくなったのか(そう言えば、いつの間にか僕もたいていの有名作は友達から借りて全部やってたような…)、それとも最盛期にファミコンソフトのゲームブックが粗製乱造されたため飽きられるのも早かったのか、詳しいことは分かりませんが、気がついたら忘却の彼方にあったことだけは確かです。
そんなわけで、「面白い」という評判4割と懐かしさ6割で本書を手に取ってみたわけですが…。
…これ、ムチャクチャ面白かった!
本書はロールプレイングゲームではなく、謎解きがメイン。プレイヤーは探偵として、昼間は人に化けていて、夜になると人を襲う人狼の正体を暴くことになります。ただ、人狼探し以外にも事件が発生し、それらの謎も解くことに…
付属のマップや容疑者リスト、そして5日分の捜査シートといったアイテムが秀逸で、これらを使い、必要なことを手書きでメモしながら本書をプレイしていると、テレビゲームとは全く違ったゲーム感覚を味わうことができます。
なお、本書には結末が書かれていません。本書のサイトにアクセスして、本書で解いた推理結果を入力し、それが合っていると結末がweb上で読めるという仕掛けになっているわけです。これ、かつてのゲームブックでは本をあっちこっち読んでいる間に最後のパラグラフを読んでしまうということがあったわけですが、それを上手いこと回避していると言えます(ま、webを使わなくても結末だけは袋とじにするなど、対応策はあるでしょうが)。
本書の中に登場する謎の多くはパズル的なものなのですが、そのパズルを解く際に付属品やカバーが必要となってきます(中古品を買うときには注意!一つでも足りないと解けなくなります)。実はここが従来の「テレビゲームの焼き直し」と違うところで、"ブック"という形態でなければならない理由がちゃんと存在するわけです。テレビゲームや携帯ゲームではできない「マテリアルという性質を使った面白さ」を実現した点で、本書はテレビゲームや携帯ゲームと対等な「ブックゲーム」たりえたと言えそうです。
忘れ去られた時代の遺物だと思っていたゲームブックが、まさかこんな形で進化を遂げているとは思っても見ませんでした。
昔を懐かしんでやってみるのも良し、いっぺんどんなもんか試しにやってみるのも良し。とにかく一読…じゃなかった一プレイをオススメする一冊です。