2013年12月25日水曜日

[紹介] 美内すずえ『ガラスの仮面』(4巻)

映画のちょい役→栄進座の舞台と着実に舞台あらし振りを発揮するマヤ。一方の亜弓も「紅天女」に野心を燃やし、端役や「王子とこじき」を演じる。対照的な二人の芝居を交互に描き、二人の運命を感じさせる所が上手い。(crossreview

 映画のエキストラも全力で取り組むマヤ。マヤの演技は見る人の目を釘付けにする。
 劇団つきかげがつぶれた後、何とか舞台に立つため中学生だてらに劇場回りをするマヤ。当然の如く誰からも相手にされなかったが、栄進座の実力者・原田菊子によって脇役に抜擢される。将来の「紅天女」候補の実力を見ようとしたのだが、ここでマヤの舞台あらしっぷりが全開!
「ほんに子守は楽でねぇ」→あの子、並みの子じゃないわ… は黄金の流れですね(笑)。

 一方の亜弓も、「紅天女」を演じる野心を露わにし、マヤへのライバル意識を燃やしつつ、端役から今までのイメージをかなぐり捨てる「王子とこじき」に挑戦する。
 二人の舞台を交互に切り替えながら見せる手法により、二人が最大のライバル同士であること、その二人がそれぞれ女優としての経験を積んでいる姿を描き出している。

 …んだけど、惜しむらくは(?)そういう演出に比して画力が追いついていない部分。
 亜弓が「美女と野獣」の三枚目使い魔を演じている姿が雑誌に載っていて、それを見たマヤがショックを受けるのですが、そこに載っている写真が「美人の亜弓+使い魔の三枚目のメイク・衣装+亜弓の回りに浮かぶバラ」という、思わず「…ボケじゃないんだよね、これ?(笑)」と言ってしまいそうになるものだったりします。
 こういうところは、全力で・真面目に・熱血テンションでやってるんだけど、何か「意図しない笑い」が発生してしまいギャグっぽくも読めてしまい、『巨人の星』とか『聖闘士星矢』など、そういう名作に通じるものがあります(ジャンルは全然違うんですけどね)。ただ、こういう視点で茶化して読んで終わり、とならないところが、これらの名作の持つ骨太なストーリーの面白さだと思います。