ラノベ風な法学入門だが外見だけで侮るなかれ。法的三段論法をする理由など法学部生も答えに窮するような根本的な所から丁寧な説明がされている。法学という学問が何をしているかがわかる!大学時代に読みたかった!
大学1回生の時に読みたかった! と思わされる本がまた一冊出ました。
本書を手に取れば、表紙からラノベチックとも言えるイラストがあり、パラパラとめくると章のトビラ毎にイラストが入っているのがわかります。物語の中でキヨミズ准教授により説明される法学の話を読んでいると、『もしドラ』や『夢をかなえるゾウ』を思い出すかも知れません。
取っつきやすく読みやすいのは確かですが、そういう"外観"に惑わされてはいけません。ものすごく理解しやすく、わかりやすく書いてくれてはいますが、その内容は深いんです。
例えば、法学部に入ると「法的三段論法」(大前提(規範)を小前提(事実)にあてはめ、結論を導く)というものを習います。が、なぜ法律家がこのような思考要式を採用するか? と聞かれると、おそらく少なからぬ法学部生でも答えに詰まるのではないでしょうか?
そういう「お約束」や「作法」とされているものがなぜそうなっているのか、その理由から説明してくれているので非常に読み応えがあります。
本書では、高校生のキタムラ君と、近所の大学のキヨミズ准教授、そしてキヨミズ准教授の同僚・ワタベ先生があちこちで出会い、そこで法学についての話が開陳される、という流れになっています。著者らしいユーモアが随所に溢れていて「単に物語、ラノベ形式にしました」というおざなりな作りではないので、ちゃんと物語としても楽しめます。
その上、本書の中で説明されるのは、法的三段論法(Chapter1)の他に、他の文系学問の特徴とそれらの違い(Chapter2)や法律の体系(Chapter3)、法解釈の仕方(Chapter4と5)、そして法制史(Chapter6)と、法学入門の名に恥じないボリュームとラインナップです。しかも、これだけのことについて、その概略ではなく根幹の考え方、そのエッセンスの部分をわかりやすく説明してくれています。
本書の登場により、法学に関する最初の一冊はこれに決定したと言って過言ではありません。
法曹に興味があったり、法学部進学を希望している高校生は言うに及ばず、法学とはどういう学問なのか何となく興味があるという大人から、法律を勉強しているけど今イチ自分が何をやっているのかよくわからないという法学部生、そして宅建などの各種資格試験で法律科目を勉強しないといけなくなったけど法律ってようわからん! とお嘆きの方、およそ法律に関心と関係がある全ての方にオススメする入門書の名著です!