法学の全体像(基礎知識や法の歴史、法というシステム)が書かれています。六法など個別法の説明がされている訳ではないが、その前提として必要な知識が書かれている。法律の世界を覗いてみたいという方にオススメ!(crossreview)
「法律」と「法」とでは、実は少し意味合いが違います。そして、公務員試験や各種資格試験で勉強するのが「法律」だとすると、本書で扱うのは「法」です。
ここでいう「法」というのは、法とは何かという問いであったり、法が依拠する思想的基盤だったりします。
第1章では、法の歴史などにも適宜触れつつ、法というモノの考え方の大前提を説明してくれます。
こういう知識や概念は、実定法の勉強にすぐ役立つわけではありませんが、法律を学ぶときに見えない部分で役に立つ「OSとしての教養」(by.山形浩生)として機能しますから、知ってて損はありません。
また第4章では、個人の自由と民主主義の関係について知ることができます。
多数決原理がときに「数の暴力」になりうることはおわかり頂けるかと思いますが、民主主義という制度自体が根本的な部分で個人の自由と緊張関係にあり、これは統治機構の場においては国会と裁判所の関係としてあらわれます。
国会という国民の多数派によって少数の人権が侵害されようとしたとき、その少数派の人権を擁護するのが裁判所なのです。が、裁判所は民主的基盤のない機関ですので、そこがやたら違憲立法審査権を振り回して法律を違憲無効にしていくと、これはこれで消極的立法という形で民主主義を掘り崩してしまうことにもなります。
そう言えば、武富健治『鈴木先生』で学級裁判(ただし、生徒が先生を断罪する学級裁判でしたがw)をするに際し、ある生徒が「民主主義だもん!」と言ってて違和感を感じた方もいらっしゃると思いますが、この辺の理屈を知っていると、その違和感の正体が何となくおわかり頂けるんじゃないでしょうか。
個人的にオススメなのが、第2章 ぼくの正義、君の正義、みんなの正義 です。
正義とは何か、というサンデル先生でおなじみの議論です。功利主義やロールズの正義論など、これらもサンデル先生の授業で出てきた話。サンデル先生の本でわからなかった人はまずこっちを読むべきわかりやすさです。
法というものの考え方(リーガルマインド)のベースを知りたい方は是非ご一読下さい。法学部の最初の一冊、まさに「13歳からの法学部入門」だと思います。