ナツメ社の「図解雑学」シリーズは、呼んだことの無い人には単なるまとめ本のように思われているのではないでしょうか。実際、僕もそう思ってました。
しかも、本書は三国志。普通は初心者向けのまとめ本と思っても全然不思議ではないと思います。
しかし、読んでみてビックリ! 著者の渡邉先生の「名士」論に基づいた解説に、僕の目からは鱗がボロボロ落ちまくりで、正史に基づいた説明という以上に得るところ大でした。
なるほど、高島俊男『三国志きらめく群像』で、とある武将を召し抱えるのはその個人を得られるという以上に、その名士一族が自分の味方につくというのが君主には大きかった、と説明されていたのはこういうことを言ってたのか!と納得。
そして、この本を読んで初めて、曹操が荀彧を自害に追い込んだのか、その理由を理解することができました。
従来の解釈だと、曹操が漢王朝をどんどんないがしろにしていくのに対し、漢王朝に忠義の心を持っていた荀彧がついていけなくなった、というようなわかったようなわからないような説明で、釈然としないものを感じていました。しかし、曹操が名士(豪族集団)という中間層を解体して君主の一元的支配体制を目指したのに対し、従来の名士を代表する荀彧との間で対立するという構造、すなわち国家体制を巡る君主と重臣間での方向性の違いだと考えると納得できました。
「今更『図解雑学』で三国志を読まなくても…」と思っている人にこそ読んで欲しい一冊です。