2012年6月11日月曜日
[紹介] 出口汪『早わかり文学史』
受験参考書だけど実況中継シリーズなので読みやすいし面白い! しかも、尾崎紅葉・鴎外・漱石について比較的厚く紹介されているのにも満足。この本で『舞姫』や『こころ』の読み方が初めて理解できたように思います。(crossreview)
受験参考書の中でも文学史の実況中継・講義録モノって、他に類書は見当たらないんじゃないかと思います(少なくとも私は見たことがありません)。
本書が扱うのは近代日本文学史。主に戦前までの文学史を4ブロックに分けて説明してあります。
国語便覧の文学史の解説だとどうしても硬くなって著者名と作品名の羅列になりがちですが、そこは実況中継シリーズ。明治からの時代の流れや西洋化とリンクさせ、物語のように流れがつけてあり読みやすいです。しかも、尾崎紅葉・森鴎外・夏目漱石などの作家やその他の作品については比較的厚く語られていて、読んだことのない作品についても「へぇ~そんな作品なんだ」と知らず知らずのうちに読んでみようと思わされます。
特に印象に残っているのが『舞姫』と『こころ』の解説。僕はどちらもあんまり良い印象を持っていなかったのですが、『舞姫』については自分が今の価値観でもってズレた評価をしていたこと、『こころ』についてはもっと深い読み方や解釈が可能であることを教えられました。高校時代の現代文の授業でも、こういうところをもうちょっと押さえた解説をして欲しかったなぁ…
近代文学に何となく興味はあるんだけど、同時に何となく手を出しにくいとも思っている人に読んで欲しい一冊です。受験生じゃなければ内容を全て覚える必要も無いので気負わず読めますし、そこで引っかかってきた作品を読んでみるのもいいと思います。