裁判員モノとしても面白いが後半はサスペンス色が強くなる。オッサン裁判員の「今の若者は弱すぎる」というセリフに「そういう優しくひ弱い若者が生まれる社会を作ったのはあなたたちです」と返したのには激しく納得。(crossreview)
裁判員裁判を扱ったサスペンス。
後編では、登場人物の隠された部分が次々に明らかになってきます。どんでん返しに次ぐどんでん返し、しかもそのどんでん返しはその都度誰かの人生を反映したもので、読み手の心情もその度に動かされます。
しかも、事案は死刑か死刑回避かという究極の判断を迫るもの。評議が白熱するにつれ、どう判断すべきかすらわからない状況が煮詰まってきます。主人公・相羽も悩みに悩み抜き、揺れに揺れながら決断を下すのですが、彼らの出した結論は正しかったのか? そのあと、更なるどんでん返しが…
後半は裁判員裁判よりもサスペンスモノの色が強くなってきましたが、それが本作に古びさせない面白さを担保しているのだと思います。
裁判員裁判が始まってもう3年以上が経過します。制度が始まってしばらくすると、それは日常化し、裁判員裁判が始まる前の不安の声は沈静化したように思われます。今の時点から見ると、本作は過剰で「いかにもドラマティック」と映るかもしれません。
が、本作の中で描かれていた問題は、"普通の"裁判員裁判の中にも流れているものであり、その危険というのは常にどこかに潜んでいます。そういう意味でも、本作は古びていないと言えるでしょう。
法廷サスペンスを楽しみつつ、裁判員裁判について考えたい方にオススメです。