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2013年8月7日水曜日

[紹介] 国友やすゆき『時男』(1巻)

浮気中に雷に打たれ、江戸時代にタイムスリップした時男。野盗に若い男を殺された村で後家さん達と次々と"人助けのSEX"をする。『JIN-仁-』と『ふたりエッチ』と『島耕作』のダメな所を合わせたギャグ漫画。(crossreview

 友人から「書籍紹介を求む」というメールが来ました。
 早速買い求めて読んでみたのですが…

 作者は『百億の男』や『カネが泣いている』等で有名な国友やすゆき。その作者が現在「週刊ポスト」誌に連載しているのが本作です。

 本作は、比喩的に言えば、『JIN-仁-』と『ふたりエッチ』と『課長島耕作』シリーズを足し、『JIN-仁-』から医療的要素を、『ふたりエッチ』から性教育的要素を、『課長島耕作』からビジネスに関する知識を引き、よせばいいのに3で割った、という感じ。タイムスリップとエロとご都合主義が渾然一体となったギャグ漫画です。

 主人公は、振られ続きの人生が一転、会社のマドンナを射止めて結婚を間近に控えたサラリーマン・堤時男。その時男が、「いい娘だな。今の婚約者が射止められなければきっとアプローチしていた」と思っていた同じ部署の地味目でかわいらしい娘に、「一度で良いから抱いて下さい」と迫られます。葛藤するも、「人助けだと思って…」と一回だけの浮気をした夜、落雷にうたれ、何と江戸時代にタイムスリップしてしまうのです!

 飛ばされた先は江戸時代の農村。お梅という妙齢の女性が野盗に襲われているところに遭遇し、これを助けた縁で、お梅の家に厄介になることになります。
 父と二人暮らしのお梅は、野盗を退治しようとしたが返り討ちに遭って帰らぬ人に。「七人の侍」あるいは吉川英治『宮本武蔵』の冒頭、収穫時期に野盗に襲われ、収奪された上に女性も陵辱されるというお甲・朱実みたいな設定です。
 夫が死んで以来、性欲をもてあますお梅と、それを不憫に思う父。「時男殿、娘を抱いてやって下さらんか」というまさかな親の公認までもらい、お梅と関係を持つことになるのですが、その際、時男は"口技"を繰り出します。すると、ページをめくると現代の帝都大学にシーンが飛びました。風俗民族学の教授が古文書で時男がした日本初のク○ニの記録を発見し、「日本の性の歴史上の大発見じゃ!」と絶叫しています。古今、様々なタイム・パラドックスが描かれてきたが、間違いなく史上空前のくだらなさと言えるでしょう。

 その後、お梅と同じく男日照りだった村の後家さんの「要望」に次々と応える時男。お梅も彼女らの気持ちが分かるので了承するのだが、ハーレムだとかそんなチャチな理屈では説明できない世界に突入しています。理解を超える話の展開に、「人助け」という概念に根底から疑問を突きつけられたような眩暈すら感じました。
 その裏で、嫉妬を必死に堪えるお梅は、最初と同じようなシチュエーションで何度も同じ野盗に襲われます。いい加減、学習能力がなさ過ぎですが、三度目の正直で遂に拉致されてしまいました。

 もう何というか、清々しいまでにどうでもいい話で、「酷い」としか形容できません(もちろん良い意味で)。何かあるとひたすらパコパコするだけの漫画で、これと井沢元彦「逆説の日本史」が同じ雑誌で連載されているというところに、週刊誌の懐の深ささえ感じさせられました。

 心の底からどうでもいいものを読みたい方にオススメの作品です!