2012年11月23日金曜日

[紹介] 内田樹『街場の文体論』

内田樹『街場の文体論』
内田樹の最終講義にして総決算。「クリエイティブ・ライティング」という講義名からは少し外れるものの、そもそも文章を書くと言うことはどういうことかという根源にまで遡って論究した本。知的スリルに満ちた一冊!(crossreview

 著者の最終講義「クリエイティブ・ライティング」をまとめた本。ぶっちゃけ、講義内容はクリエイティブ・ライティングから逸脱する部分も多く、特に文体そのものや文章の書き方と言ったテクニカルなものを求めて読むとアテが外れるかもしれない。
 しかし、本書では、文章を書くとはそもそもどういうことかという根源から問い直されている。「リーダビリティ」「宛て先」といった文章を書く際にある程度関係しそうなことから、「エクリチュール」果ては「アナグラム」と、直接関係しないようなテーマについても講を割いて論じられている。これらは文章を書く上で直接役に立つツールではない。が、本書の内容は、文章を書くという営為において意識はされないが、確実にその土台の部分で機能している「OS」のようなものであり、実はそういう一見関係ないと思われる抽象的な議論こそが、読まれるに値する文章を書く際に決定的な影響を与える、ということに読後気がつくはずである。

 文体論というよりも「文章を書く上で持っておきたい教養」というのが内容的には近いかも知れない。あるいは内田樹の総決算としても読める本である(色んな箇所で刺激を受けまくり、本の角が折り目だらけになってしまった)。掛け値無しにオススメする一冊。