2011年6月11日土曜日

侮れない「学マン」

今回取り上げますのは、学マン、すなわち学習マンガです。
2010年の5月頃、バンダイナムコがRPGみたいな小学校教科書を共同開発するとかなんとかというニュースを見ました。
昔あってゲームブック*みたいにならないかちょっと心配です。
*ゲームブック…昔ありましたよね、ドラクエとかであった文章がナンバリング振って細切れにされていて、「たたかう→218に進む・逃げる→48に進む」みたいな指示に従って読む本。僕は好きでしたよ。
僕はこの試み自体、かなり冷めた目で見ています。
といいますのも、今までマンガで分かりやすく系の本って、「最近のガキはマンガしか読まないんだから、絵でもつけときゃころっと騙されて読むに決まってらぁ」的な、いかにも子供をバカにしたような作りが多かったからです。

でも、そういうのって実際つまんないんですよね。読んだら一発でわかります。
子供の頃もつまらなかった読後感しかなく、大きくなって読み返してもやっぱりつまらない…一体誰のウケを狙って描いたんだ、コレ? みたいな死屍累々が学マンというジャンルなのです。

厳しいことを言いますが、学マン関係者は、マンガを舐めています。
名探偵コナンの挿絵を入れときゃ子供は食いつくでしょ、とばかりに、誰か分からない書き手に漫画を描かせて一丁上がり…そういう大人の態度に子供達は叛旗を翻し、学級崩壊を起こしているんです!
ホントにもう、しょうもない学マンを出版している奴らは全員洗濯板の上に正座させ、膝の上にジャンプ・マガジン・サンデー・チャンピオン・コミックトムを積んでやりたい気分になります。



逆に、そんな学マンの中で面白いのがあると、ライバルがポンコツばっかなだけに出色の作品となります。


鈴木みそ先生が五年の歳月をかけて取り組んだ、本気の化学マンガです。
高校時代、科学の授業で挫折し、唯一覚えている科学用語が「六方細密充填」という完全な化学音痴の僕でも楽しく読めました。

この作品を読んでわかるのは、マンガとしての完成度です。
「学マンだから」という逃げを封印し、マンガとしての面白さをちゃんと追求した上に科学の勉強(わかりやすさ)を融合させているからこそ、ちゃんと読んで楽しめ、知識も身につくという、当初の図々しすぎる狙いが初めて達成されるわけです。
この一冊に五年をかけたからこそ、このクオリティ! ホント凡百の学マン関係者は全員洗濯板の上に…(以下略)。

そして、『マンガ 化学式に強くなる』からまた五年…。満を持して登場したのが、これです。


高校時代、文系だった僕は1Aというヌルい選択授業しかとれず、しかもそこで覚えているのは、音の授業の時、甲高い声の先生がヘリウム吸って「ア、声ガ高ナッタ、高ナッタ!」といつも通りの声で叫んでいて、クラスが一斉にツッコンだことだけです。

が、この作品と出会って、初めて物理の世界が好きになりました。

人工衛星って、落ち続けてたんですね。

原作の物理の先生と綿密な打ち合わせをしてリライトを重ねただけあってわかりやすいですし、ここでもマンガとしての完成度が遺憾なく発揮されています。
これはAmazonのレビューに書いてたことなんですが、最後に相対性理論の話が出てくるんですね。その宇宙にも広がる壮大な世界観のドキドキと主人公二人の恋愛感情のドキドキがリンクしていて、ここでもみそ先生、きっちりマンガ作品として作り込んでいます。



 

昔、家庭教師してたんですが、受け持ちの男の子が読んでいて面白かったので、自分でも買ってみたシリーズです。
マンガ自体は誰かが似せて書いたアレな絵なんですが、中身は本気です。この人体編は特に出色で、かなりマニアックなところまで書かれています。

僕はこういうオーバースペックはむしろ積極的にすべきだと思っているので、その心意気に100点を上げたくなるんですが…このシリーズの問題点は、キャラクターが「両さん」だという一点に難を抱えているのです。
と言いますのも、『こち亀』って男の子ならある程度は読むんでしょうが、圧倒的に女の子受けしないんですよね…orz 両さんのマニアックキャラで『こち亀』ファンの少年には違和感なく読ませるんですが、『こち亀』に興味のない男の子や女の子のに極端にウケが悪い…ううむ、悩ましい所です。



日本の歴史については、コナンシリーズやドラえもんシリーズ、両さんシリーズや、キツいのでは石ノ森章太郎のがありますが、個人的にはどれもあまり面白くありませんでした。

日本の歴史については、小学館から出ている『学習まんが 少年少女 日本の歴史』全21巻が出色の出来栄えです(但し、最新版の1巻だけはハッキリ改悪です)。


実はこれ、小学館が社運を賭けて製作した一大事業です。
あの山川出版社の『詳説日本史』を編纂していた児玉幸多先生が監修をやっていたってだけで、かなり本気です。
しかも、マンガ作成段階では考証で妥協しなかったためにでリテイクの嵐が吹き荒れ、作画のあおむら純先生は途中で目を悪くされたくらいです(後発シリーズである『人物 日本の歴史』の途中であおむら先生のクレジットが外れました)。
本気で作っているだけに、受験日本史や大学で歴史学を専攻した人が史料を読んでいると、「あ! これ『日本の歴史』で見た話や! ようこんな史料からネタ引っ張ってきたな」
とビックリ&感心することがガチであります。
古くさいと言えば古くさい絵柄なのですが、クセが無く丁寧で、非常に読みやすいです(この辺は他者から出ている学マンの日本の歴史と比較して頂ければ一発でわかります)。

僕は、小学校5年生のクリスマスに、サンタさんからこの『日本の歴史』の1巻から5巻をプレゼントされたんですが(荷物が重いのを避けるために現地で学マンを調達してくれた北欧の見知らぬ老人に感謝です)、中学・高校時代とずっと読み返していました。

そういえば、昔、教え子に「『日本の歴史』各巻の見所&最萌えシーン」一覧表を教えてあげたのを思い出しました。
折角なので再録しておきます(旧版対応。ただし1巻と20巻以外はそのまま)。
■1巻
(縄文時代)
ふぐを釣った親父の一家が、フグの毒にあたって死んでたシーン萌え。

■2巻
(飛鳥時代)
聖徳太子が死ぬ間際に「世間虚仮…唯仏是真」と言い残した萌え。
あと、中臣鎌足が中大兄皇子の靴拾うとこ萌え。

■3巻
(奈良時代)
行基が大仏づくりを応援するとこ萌え。

■4巻
(表紙)
全巻通じて一番暗い萌え。
(平安時代初期)
あと、桓武天皇が早良親王の祟りに口に指つっこんでビビるとこ萌え。

■5巻
(平安時代)
藤原道長の望月の歌に呆れる貴族萌え。

■6巻
(源氏の挙兵)
源義仲にからかわれた猫間の中納言萌え。
(壇ノ浦の戦い)
安徳天皇を抱いて入水自殺するときに「波の下にも都はござりましょうぞ」萌え。

■7巻
(鎌倉時代)
承久の乱のとき、三寅を抱いた北条政子に「頼朝様の御恩は山よりも高く海よりも深い」と言われて涙した御家人萌え。

■8巻
(室町時代)
足利尊氏が後醍醐天皇に弓引くこととなり「元どりを切ってこの世を捨てようと思っていたのに…」と悶々とするとこ萌え。

■9巻
(室町中期)
足利義教を暗殺した赤松満祐が振り向きざまに「領国の播磨へ帰ろうぞ」と言い残すとこ萌え。

■10巻
■11巻
戦国時代は丸々見所の塊なんで萌えシーンは省略。

■12巻
(江戸時代初期)
天草四郎の「ふしぎ」萌え。

■13巻
(江戸中期)
松尾芭蕉が藪蚊に悩まされるとこ萌え。

■14巻
(享保の改革)
火事のときに派手な覆面をして指図する吉宗萌え。

■15巻
(寛政の改革)
男女混浴禁止にへこむ町衆萌え。

■16巻
(幕末)
「神州は夷どもに汚されてしまうのか…」とへこむ孝明天皇萌え。

■17巻
(明治維新)
西郷どんの首ばはねるときの「許しゃったもんせ」萌え。

■18巻
(日露戦争)
雑誌『明星』を読んでた娘をしかる親父萌え。

■19巻
(第一次護憲運動)
白ばら議員に問答無用で萌え。

■20巻
(昭和初期)
後に二・二六事件を起こす青年将校の「貴様、泣いているな」萌え。


江戸時代以降についてはみなもと太郎の『風雲児たち』シリーズが問答無用で面白いんですが、

 

江戸の長屋住まいの生活を書いた15巻は『風雲児たち』に負けず劣らず面白いんです。
しかも、15巻の1章では子供だった勝吉とお花が、3章で時代が進むと所帯を持っていたりして、それが子供心に嬉しかったりもしました(BON JOVIでいう所の「Livin' on a prayer」→「It's my life」のトミー&ジーナです)。





ちなみに、鈴木みそ先生の"現代社会"が読みたい方は、

  

をどうぞ。
ちょっとばかり色々心が重くなりますが、掛け値無しのオススメです。

あと、もっと深い”現代社会”としては以下をオススメしておきます。


ただし、ドンベコみしても知らないよ。